この人に聞く!vol.16 小原流八戸支部 荒瀬 豊波 先生

荒瀬 豊波 先生

2012年より八戸支部支部長を務める荒瀬先生。
荒瀬先生は「申請件数30件以上表彰者」にも選ばれています。それ以前の制度である「初等科申請表彰」でも受賞者の常連でした。
「申請の多くは学校や地域に根差した活動から」とお話される先生に、に教室運営についてお伺いいたしました。

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八戸支部にお家元をお迎えした際の一コマ

学校での指導について。

-学校の正課に取り入れられるようになったきっかけを教えてください!

八戸市内の私立高校・八戸学院光星高校の理事長との懇談がきっかけです。
現在は理事長ですが、当時は校長先生として活躍されていました。校長先生は特色のある学校教育の必要性を感じておられて、その中から女子教育の重要性を強調されていました。そのようなお話の中から、女子の感性を高め、社会に巣立った時に役立つスキルとして、伝統文化としてのいけばなを正課授業に取り入れることで考えが一致しました。生徒さんたちもすぐにいけばなの魅力を理解し、厳しい中にも非常に楽しい雰囲気で続けられています。
始まりは私が副支部長の時でしたから、現在は14年目を迎えています。
生徒の中には東南アジアからの留学生などもいて、青森県学生競技会に団体で参加した際、カンボジアの留学生が家元賞を受賞したこともありました。その時、「言葉は伝わらなくても感性は伝わるのだ」と感動いたしました。
その留学生は現在31歳になり、神戸で通訳の仕事をして活躍しています。現在も年賀状のやり取りはもちろん、東北に遊びに来てくれた時には必ず会いに来てくれます。 3.11の大震災の時にも日本におりましたので、親元を離れて不安でしょうから様々なケアをいたしました。 また私自身もカンボジアに興味が湧いたので旅行にも出かけました(笑)。
人と人とのつながりがいけばなをより楽しいものにしてくれていると思います。

-先生の初等科申請数が多いのも、やはり学校からの申請が多いのでしょうか?

正課授業が理由です。
正課授業の出席者は、資格取得の一環として全員が初等科申請を行う決まりです。
大学進学や社会に出た時、いけばなの資格を持っていることが本人の大きな自信につながるという学校側の考えもあります。小原流の許状は立派なので、渡す際にとても喜ばれます。
学校では多いときに168名の生徒を指導していることもありました。
1度の指導は30名程度でしたが、指導を終えたら次の授業、また次の授業と慌ただしく指導していました。正課のため時間に遅れることは許されませんので、授業前には何度も何度もシュミレーションしました。
男子生徒には重いものを持ってもらう、生徒に先生役を務めてもらうなど様々な工夫をすることで乗り切ることができました。ただ畳の部屋での授業でしたので、足を痛めてしまったときは大変でした(笑)。
また1時間に40名の生徒を指導するために、とにかく「褒める」ことを大切にしていました。
子供たちと過ごしていると分かるのですが、あまり褒められたことがないということに気づきます。
そして褒めると、本当に上手にいけてくれます。

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いけばなを広げる活動について


当時、学校でいけばなの授業の担当をしてくださっていた加藤先生は、現在小原流の先生としても活躍しており、八戸支部幹部にもなっています。授業を休んでしまった子がいたので、余ったお花で先生も一緒に生けてみませんか?とお誘いしたところハマってくださいました。
加藤先生は現在、幼稚園の園長と短期大学の学長補佐もやっていらっしゃいますので、そうした繋がりからまた、いけばなの輪を広げていけたらと考えています。

大人になってどのようなタイミングでお花を習いたいか、私自身の経験も踏まえますと、経済的にも時間にもゆとりが出てきた時ではないかと思います。
私も30歳くらいでいけばなに「復帰」したのですが、それは子どもの頃にいけばなを習っていたことが大きいです。
子どもへの指導を活発に行っているのもそのためで、「小原流は一度辞めたとしても大人になってまた続けられる、日本のみならず世界中で続けていける」と指導の際に教えています。

-大人にはどのようにいけばなをおススメされていますか?

接点をいかに持つかが重要です。新聞社主催のしめ縄づくりの体験会やクリスマス体験会などを開催しておりますので、そこに参加いただいた方が入会してくださっています。
またいけばな以外の趣味でスポーツをしておりますので、そこで知り合った方にも声をかけています。いきなり「いけばなを習ってみませんか?」と声をかけるのは難しいので、みんなの花展や諸流展のチケットをお渡ししています。花展を見て興味が湧いてくださった方が小原流に入会してくださります。花展会場になりそうなところで働いていらっしゃる方もいて、八戸支部に様々な面で融通を効かせてくださいます。
人と人との繋がりを大切にすることで思いもよらず大きな輪となっているような気がしています。
若い頃に支部長に任命されたことも良かったと思います。とにかくやることがいっぱいあったので、全てをやり遂げるために工夫することの大切さとバイタリティを学びました。

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定期的に開催している講習会の様子。いけばなとは限らない活動をしています。

後進の育成について

-次世代の教授者はどのように育てていらっしゃいますか?

学校の正課授業や伝統文化子ども教室などでは、基本的には支部長が講師を務めますが、その席に補助指導員として幹部や準幹部を同席させます。時には講師を務めることもあります。
外部への指導に後輩を同行させることで、若い先生にいけばなを教える楽しさ、喜びを体感してもらっています。
このようにして地域社会に小原流の魅力を伝えるという、八戸支部の伝統を後世に引き継いでまいりたいと考えています。

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多い時には168名の学生(!)を教えていたという荒瀬先生。現在でも60名の学生を指導しているとのこと。それだけでも大変ですが、支部長職、そして地域住民への体験会、趣味を通じて知り合った方への呼びかけ、子ども教室と次々と花の輪を広げているエネルギーに圧倒されました。荒瀬先生、ありがとうございました!