この人に聞く!vol.7 小原流旭川支部 川村菜穂先生
小原流旭川支部 支部長 川村 菜穂
1978年 小原流入門。
入門時より熱心に小原流いけばなの技術習得・研鑽に励み、専門教授者の資格登録以降、多くの生徒を育成、いけばなの指導に尽力している。また、伝統文化いけばなこども教室において子供を対象とした文化活動に貢献、旭川市立東光中学校においてもいけばな講習会を毎年継続して開催するなど、その活動は多岐にわたる。現在は、小原流旭川支部 七代支部長として支部運営に活躍中。
若年層の生徒が多い理由
-先生の教室データを拝見させていただいたのですが、若い生徒さんがとても多くいらっしゃいますね!それも子供とは限らず、40代の方なども多くいらしています。どのようにして生徒を集めていらっしゃるのですか。
私って恵まれているんですよ(笑)。
ご縁があって旭川にある菓子舗「壺屋総本店」にお花を飾らせてもらっていたら、そこの会長夫人が習ってくださったり、飾られている花がきっかけで体験入会に繋がったり。そうしたところから口コミで教室に来てくださる方が増えました。
あとは「全国支部紹介」でもお伝えした通り、伝統文化親子教室からの流入が大きいです。そこで習った方がたくさん残ってくださいました。
小原流いけばなを習っているからには、研究会に出ることと、准教授までとることが普通という指導をしています。研究会にまで出ると長く続く傾向にあるようです。
点数がついてしまうのでハマらない子もいるのですが、そうした子でも准教授までは取りたがります。指導できる資格を持っていると成績の内申に書けますからね。
中学校や高校に進学するとやめてしまう学生もいるのですが、親子で習いに来てくださる場合はお母さんが残ってくださっています。
こうして続けてくださっているのはいけばなの堅苦しいイメージを、前支部長の井上先生の時代から払拭しようと努めてきたのが大きいかもしれません。
研究会を使って教室と支部の活性化!
-研究会にお誘いすることのメリットは何でしょうか
逆に自分のお教室だけでは生徒を満足させていてあげられるのか、という感じです。 淡々とお稽古を続けることも出来るのですが、そうすると飽きてしまうでしょう。
研究会では家元代行に習えるということの魅力を伝えると、モチベーションが上がります。 点数が目に見えて試される場があると生徒は前向きにしっかりお稽古もするし、私自身も指導のために勉強します(笑)。
だから自身の教室の運営のマンネリ防止のためにも、支部研究会を活用させていただいているという感じです。
転勤族で北海道内の引っ越しが続いている男性の社中も、研究会の魅力にハマって休まずに出席してくださっています。
現在はその方を専門教授者にさせようと日々画策中です(笑)。
-その男性の社中も、口コミで先生の教室を知ったのでしょうか。
このご時世にこのようなことを言うと反感があるかもしれませんが、支部で「男性のためのいけばな体験会」というものを開いて、それがきっかけで入会してくださいました。 集客を性別で区切ること良くないというのはもちろん分かっています。 しかし「いけばな」というとまだ女性が習うもの、それも大人の女性ばかりが習うものというイメージは根強く残っていると思いませんか?
日本の文化やお花に興味があってもそんなイメージがあると、男性がいけばなを習うのは勇気がいることなのではないかと思いました。
それでわざわざ「男性のための」と銘打って、研究会開催時に合わせて体験会を開きました。その結果、今回は男性しか来ないのだ!と安心した方々が参加してくださりました。
その時の研究会指導を西晃宏先生にお願いしていたので、指導が終わった後に体験会も担当いただきました。
研究会は多くの役員が集まり時間と労力をかけていて、先生も遠方から来てくださる機会なので、何か支部活性化に繋がるような時間を持ちたいと常に考えています。
ということで、先生も男性の体験会となりました(笑)。そこからのご縁で、私の教室に男性の生徒が通ってくださっています。
これも性差別的なことに聞こえるかもしれませんが、男性は数学的な見方をするので、いけばなと相性が良いように思います。先日勉強会で七宝を触ったのですが、そのことも大変喜んでくださいました。
小原流を次の世代に繋げたい
-研究会を教室や集客にフル活用しているのですね!本部行事も同様に利用されているのでしょうか。
新型コロナウィルスの影響で状況は少し変わってしまいましたが、地区別教授者研究会には参加するように促しています。最初は筆記問題は何も分からなくても良いし、良い点数だってつかなくたって良いのです。支部を超えてたくさんの人が小原流を学んでいることを実感してもらうこと、また優れたお花を実際に見ることが大切だと指導しています。
そして私も一緒に参加いたします(笑)。
私だって、良い点数がもらえるとは限りません。恥をかくのではないかという見方もできるかもしれません。
しかし生徒にとって「師匠と同じ立場で勉強する」という体験が必要だと思っています。 師匠が手の届く場所にいるということを実感してもらう。 それは私の不甲斐なさを認めるというのではなくて、「私だってこのくらいの実力で先生をやっているのだから、あなただって専門教授者になれるのよ」、というメッセージです。 生徒が誰かを教えることに踏み出すハードルを下げることに繋げています。
-男性の社中も専門教授者に育てたいとおっしゃっていましたが、先生は後進の育成にとても積極的に取り組まれていると感じました。それはなぜでしょうか。
専門教授者になると、お稽古に臨む姿勢が確実に変わります。熱心になってくださります。
そして現在、旭川支部の役員はフルタイムワーカーが多いので、支部に手が足りません。これから専門教授者になる方の多くもそうでしょう。しかし支部の中枢を担う業務はできなくても、専門教授者は支部の活動を積極的に手伝ってくださいます。
そして若い人が動いた方が支部に活気が出ます。若い人のアイデアで支部の運営が楽になることもあります。 若い人をどんどん入れて、支部に外の空気を入れて、活性化させたいと思っています。 若い人も違う世代の先生との触れ合いで学ぶことがあるはずと思っています。
そしてそもそも私は小原流の花が大好きです。花は何も語らないけれど、小原流の花からはものすごくエネルギーをもらっています。特に写景盛花のように雄大な自然を器に映し出すというコンセプトが大好きです。
そして小原流の先輩たちが培ってくださったコミュニケーションの地盤があります。久しぶりに会っても、仲間だという感覚を持てるのです。実際30年前に教えていた生徒がふらりとあらわれて、お稽古に復帰したりしています(笑)。
教えることにも喜びがあります。親先生からの出会いや、様々なご縁があって、楽しい思い出がたくさんあります。 私が小原流に感じた思いを追体験してもらいたいと感じているのですかね。
次の人に小原流いけばなを繋いでいくためには自分が何をしなければいけないか、日々考えて行動しています。
「全国支部紹介」と続けて川村先生には長時間にわたるインタビューをお願いしてしまいました。しかし始終笑顔を絶やさず、小原流を次の人に繋げるためにはどうしたらよいか、専門教授者を増やすにはどうしたらよいかという取り組みを前向きなお話の数々に、皆さんも元気をもらえたのではないでしょうか。
川村先生、お忙しいところ誠にありがとうございました!
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