この人に聞く!vol.8 小原流和歌山支部 福永 八千代 先生
福永 八千代先生
小原流専門教授者としてご活躍され、また、これまでに数多くのアート作品も発表されている福永八千代先生。和歌山支部紹介に続き、「この人に聞く!」にもご登場いただきました。専門教授者として、そして「表現者」としての福永先生にスポットを当ててお話しをお伺いしました。
専門教授者としての福永先生
-福永先生が専門教授者になられたのはいつ頃ですか?
丸専として1982年に登録した事が始まりです。
恐らく准教授だったと思うのですが、自宅に飾っている花を見た友達から「教えてほしい」と言われてスタートしました。
最初は自宅で生徒2人。
そこから口コミで生徒が増えていったように覚えています。
-人に教える事に不安や怖さはありませんでしたか?
それはもちろんありました!
「私が教えられるのかな・・・」という不安があったので、その気持ちを西村先生にお伝えしたところ、とても喜んでくださり「それは教えてあげないと」と背中を押してくださいました。
当初は西村先生に花材や挿法をお伝えしてご確認頂いていたのですが、ほどなくそれも不要となり、丸専として独り立ちいたしました。
自分自身が前向きな性格だからなのか、皆さんとお花をいけることがただただ楽しい時間でした
今も近所のご婦人方など、リラックスしてお花を楽しんでいただいています。
-現在のお教室はどのような形態で運営されているのですか?
今は、杭ノ瀬文化教室(大人)・杭ノ瀬子ども教室・勤労福祉会館(プラザ)教室・粟教室・岩出教室・医大華道部教室・和大前教室と、ありがたい事に7教室を開講しています。
他の行事を開催するとなかなか調整が難しいのですが、日程時間の変更や教室移動など可能な限りあらゆる状況に対応できるようにしています。
月1回~3回のお稽古や、希望によって季節の催事(いけばなと併せてXmasリース・お正月飾りなど)にもお応えするようにしています。
-それぞれのお教室で生徒の皆様も千差万別だと思うのですが。
本当に様々な方がいらっしゃいます。
お母さんと一緒に来られるお子さまは、子ども教室には行かずに大人の教室に通われて、研究会にも参加してくれています。
やんちゃな子や内気な子もいたりするので、とにかく否定的な事は絶対に言わず良い部分を褒めています。
子どもさんには特に分かり易い表現で楽しめるようにしています。
いけばなに関連する事など、知っていると思いがちな用語については、分かり易い言葉に変換し、時には手の動きや図式も交えたりしています。
また、中には早く資格を得たい方もいらっしゃいますので、そんな方には基本の反復とともに集中してお稽古しています。
ただ花を愛でたい、いけたいと思うだけで通われる方にはより楽しんで頂く雰囲気作り心がけていますが、しっかりと内容は学んでいただきます。
良くも悪くも家族的・冗談が飛び交う環境ですね。
堅苦しくなく、窮屈でもなく、ひたすらお稽古を楽しむ。
そうするとお友達を連れてきてくれます。
-近年「丸専になりたくない」という方が多いですが、その理由は何だと思われますか?
「教える事が真に学ぶこと」だと個人的には思っているのですが、そういう想いも人それぞれです。
ご自身がそこまで極めなくても良いと思われているなら丸専になることは難しいのではないでしょうか。
他にもっと興味があったり、教授者活動をしなくても(流派を問わず)「いけばな教授者の資格を持っている」という方が多くいらっしゃいます。
許状に教授者と記載があるだけで満足する傾向もあるようです。
教える事で何が生まれるか、その価値・魅力を伝える方法があれば...と日々模索している次第です。
丸専になるきっかけが無いということもあるのかもしれませんが。
-昔と今とでは価値観が多様化し、人間同士の関わり方も変わっています。これまでの良いところ、悪いところも含めて、これからの教室運営に必要だと思われることは何でしょうか?
お花を習う事が当然の時代を経て、いけばな人口が減っている状況です。
でも、そんな時代に教室に来て下さったことを考えると大切にするべきところが見えてくる気がします。
お花に対する想いがある方々だと思いますので、小原流の魅力や伝統文化としてのいけばなの話し、資格取得のメリットなどをしっかりと伝えてます。
そうすると、「資格なんて必要ないですー」と言っていた方でも、ある時期に一気に取得された事もあります。
やはり、いけばなが好き、お花が好きな方には、こちらの想いを伝え続ける事が大事なのではないでしょうか。
また、人が人を呼ぶのも確かな事です。
今の生徒さんの個性を大切にして、花を介してお互いが信頼し合えればと思います。
また教授者自らも常に学び謙虚に花を生ける姿勢で有りたいと思います。
表現者としての福永先生
-ブラウザで「福永八千代」と検索すると、日本美術倶楽部のHPにある福永先生のページ(https://www.nihonbijutsu-club.com/fukunaga/)が出てきます。この経緯をお聞かせ願えますか?
元々は油絵を描いていましたが、油絵に限らず以前から色々な美術館に作品を出品していました。
その作品を見ていただいて連絡が来たという経緯です。
海外の画廊からのお誘いなどもあったり。
(オーストラリア オペラハウスに展示)
-福永先生のプロフィールページ(https://www.nihonbijutsu-club.com/fukunaga/#profile)を拝見すると、国内外を含め様々な展示実績がございます。
展示依頼の多くは画廊からの依頼です。
オーストラリアの展示は日豪の姉妹都市・友好都市の交流記念を祝した企業イベントへの参加企画でした。
あと、テレビドラマの作品採用は、NHKドラマの『クライマーズ・ハイ』や『七瀬ふたたび』で採用されました。
-2005年の佐藤浩市さん主演のドラマでしたね。
そこのある場面で、確か新聞社の壁にポンっとかけていただきました。
和紙に墨をかけて鉄の粉を流している作品なのですが、あれは襖くらい大きなものでした。
作品制作については、気の向くままに、心を開放して向き合うのが私のやり方なのですが、あの作品も偶然に仕上がったというか。
タライがあって、その中に墨を入れて、そこに白い布を漬けて・・・というステップから始まった作品で、最終系をイメージせずに作り出しました。
途中経過を楽しみながら、いろんな事を試してみる事が実に面白いのです。
アートワーク(https://www.nihonbijutsu-club.com/fukunaga/#works)に、ドラマで使われたものと似た作品を掲載していただいています。
-華道家、造形作家など、様々なお顔を持つ福永先生。表現される事は幼い頃からお好きだったのですか?
幼いころから好きでした。
子どもの頃、黙々と鉛筆画を完成させて、大人の方からほめて頂いたりすると益々表現する事が好きになっていました。
人って褒められると伸びますし(笑)、褒められたら覚えていますよね。
そこから立体作品に興味が向き、型にはまらない制作方法を試すなど自由な発想の作品になってきました。
こうでなくてはならないとは思わず、心の思うまま、気の向くままなのですが、材料・道具なども自由に扱うため制作中に方向性が変わって偶然が作り出す造形にハッとする事もしばしば。
形が出来上がる過程も楽しく、時には悩ましく・・・(笑)。
-立体的な作品はいけばなが始まりですか
平面を主に制作していたのですが、立体を制作するようになったのは「マイ・イケバナ」がきっかけです。
いけばなにおける植物の生命力を感じて作品が変化しました。
逆に静かに佇む鉄の塊に植物との共通性を見出したり、錆びるということに動きを感じたり。
今まで制作してきたものと両方が響き合って一つの作品に繋がっている事を感じます。
私にとっては「マイ・イケバナ」は悠々と制作できる場所でした。
残念ながらマイイケは無くなってしまいましたが、今後の作家育成にも繋がる何かの催しが計画されると嬉しいですね。
他団体の公募展情報の案内などもお知らせ頂くと、会員の皆様の創作の幅が広がるかもしれません。
-ご自身の感覚や感性を自由に表現する作業はとても尊いものだと思うのですが、他人の目が気になったりされますか?
制作や自作品に関しては他人の目は気にならないほうですが、支部長就任後は表現活動について封印してきました。
今が表現するタイミングなのか否かなど、熟考し総合的に判断してきました。
自分に問いかけながら超えていくという感じです。
忍耐が必要な時も有りましたが、その行動に悔いが残らず今を迎えているなら、もう封印から自分自身を解き放す時だと考えています。
時を経て年齢も重ねました。
芸術に歳は関係ないと言われますが・・・。
活動(制作・発表の場)を再開しても良い時期になったのではと思います。。
-最後に、「表現」することは、福永先生の人生でどのような意味がございますか?
実は、それが一体何なのか考えたことがなく・・・。
でも、心が動かされて制作しているのは確かです。
作品を見て心が動き、何かを感じてくれる他者がいる事が力となり次の作品へと繋がる。
無からの再生。
概念の排除。
創りたい気持ちを抑えつけず、私の中で訴えてくる力の掘り起こし作業。
身近にある物に目を向けると、そこから新たな形が広がっていき、朽ちていくもの退化していくものでさえ美しく生命を感じます。
いろんな想いが私の中で溶け合い混ざり合っているのですが、それもこれもやっぱり気の向くままなのです。
ここ10年くらい活動をしていませんでしたので、創作意欲が高まっていることを感じていて、国内外で制作・展示(いけばな・造形作品)が出来ることを、今は夢見ています。
自分の中から湧き上がる創作意欲をひとまず封印し、現在は支部長として支部運営にご尽力いただいている福永先生。これまで様々な作品を発表され国内外で出品され、また、専門教授者としても多くの教室を運営されています。温かな雰囲気の中、これからも表現する楽しさを数多くの生徒にお伝えいただけましたら幸いです。そして、表現者として新しい作品が誕生することもお待ちしています!いけばな行事の合間を縫ってインタビューにお応えいただき、本当にありがとうございました。今後とも何卒宜しくお願いいたします。
全国支部紹介vol.10 小原流和歌山支部
小原流は全国に144、そして国外には89の支部があります。皆さんが在籍している支部がそうであるように、それぞれの支部に設立のあゆみや特徴、現在の取り組みなどがございます。本ページにて毎月、全国支部を1支部ずつご紹介いたします!今回ご紹介するのは小原流和歌山支部です。
詳しくはこちらから。
特集!秋草のいけばな
「小原流の事務局報 2022年11月号」では、「実ものいけばな」を特集いたします。
食欲の秋とも言われるこの季節、いけばなでも可愛らしい実ものの花材が使用されます。花展でいけた柿を食べた!という方もいるのではないでしょうか。今回は全国各支部より寄せられた、実もののいけばなを紹介いたします!
詳しくはこちらから。