この人に聞く!vol.3 小原流札幌支部 小野 洋子先生
小野先生は札幌支部事務の運営の簡略化を推進し、また札幌支部で伝統文化親子教室が盛り上げた立役者です。またそこからご自身のお教室に生徒を繋げています。イベントごとに参加する方はいても、なかなか教室には来ていただけないという声を多く聞きます。今回は先生に、HPでの集客や、イベントに参加した生徒を教室まで生徒を繋ぐ秘訣を伺いました。
小野洋子先生の個人HPは、こちらからご確認いただけます。
小野 洋子先生プロフィール
・1976年
22歳アメリカのネブラスカ州で過ごす。その時、初めて母国日本を外から見るという体験をした。同時に「私は何者なのだろう?」という素朴な疑問が湧き、帰国後、日本文化を学ぶために近くの華道教室(古流)に通い始めた(東京)。
・1979年 小原流入門。職場の上司が就業終了後に指導してくれたことがきっかけ(札幌)。
・2003年 一級家元教授取得
・2021年 副教務
小原流の自然盛花(写景盛花)に魅せられ、元々の趣味だった山歩きを本格的に開始。
若い頃は険しく命がけの登山も行っていたが、現在では自然に親しむことにシフトしてひとつひとつの出合いを大切にしたいと低山を歩いている。「私たちにとって名も無いただの草であってもこの地球には絶対必要な存在である」ことなど、いけばなを通じて自身が経験したり感じたりしたことを次の世代の人たちに伝えることをモットーに活動している。
PCやHPを触るようになったきっかけ
₋札幌支部の事務運営のデジタル化やHP等の整備において、小野先生の活躍が礎となっていると支部長より伺いました! -「新たな出会い」ということですが、先生は4つの教室の運営されていますよね!それだけの教室を運営するのは金銭的にも、体力的にも大変ではないでしょうか。
ありがとうございます。
でも、私はもともと知識があったわけではございません。支部事務で使用しているエクセル(表計算のソフト)は、当初は簡単な計算式を入れただけで私は大したことはしていないんですよ。
ただ便利になると皆さん喜んでくださるので、少しずつ勉強いたしました。支部のお便りを作成するのに使用していたワープロからPCへ移行したのがきっかけだったように思います。もう随分と前のことですが。
HPは以前から運営していましたが、その頃は教室の生徒が見るだけの、自己満足の日記のようなページでした。しかし教室の生徒を集めたいという思いと、藤谷先生のアドバイスを受けて、一念発起してサイトを開設いたしました。
そうした時に、HPを訪れた方が「何を見たいか」という視点で考えて、情報を整理しました。
以来、教室の戸を叩く新しい生徒の多くはHPからのお問合せです。HPから新たな出会いをいただいております。更新が滞ると「更新はされないのですか?楽しみにしています!」というお問合せもいただきます。モチベーションを高く持ち続けるのはなかなか難しいことです。
小野洋子先生の個人HPは、こちらからご確認いただけます。
複数ある教室の運営について
初めは自宅だけで教室運営していたのですが、生徒が徐々に集まって、手狭になってしまいました。そこで、手ごろな価格で借りられる地区センターや交通の便が良い札幌支部のお教室をお借りして開講いたしました。ただし地区センターは様々なイベント等で使用されるので、予約の必要や道具を置いておけないのがネックです。
その点、札幌支部教室は道具もあり、安心してお借りできるのでありがたく使用させていただいております。
「アーバンサークル」という教室は、サ高住(サービス付き高齢者向け住宅)の教室です。新型コロナウィルス感染拡大の影響で現在は出入りできないのですが、こちらの教室自体との出会いも、HP経由でした。担当の方が私のページを見て、ぜひお稽古いただけないかと連絡をくださいました。
支部で花展を開催した時には、皆さん喜んで足を運んでくださいました。早く皆様とお会い出来る日が来ると良いのですが。
教室運営が大変と思ったことは、あまりありませんよ(笑)
伝統文化親子教室を広めた方法
-先生はその他にも伝統文化親子教室の運営もなさっていますよね?藤谷先生からは、札幌支部の伝統文化親子教室の発展も、小野先生の活躍のお陰と伺っています!
伝統文化親子教室には、綾部先生のお手伝いで参加したのがはじまりでした。「手伝いが出来る人はいませんか?」という声に、斉藤副支部長と共に手を挙げた日が懐かしいです。
教室は札幌支部事務所を使用していましたので、対象年齢の子どもたちに声掛けをして支部教室に連れて行きました。
しかし参加者の声を聞いてみると、地下鉄やバスを乗り継いで来ている人もいて、参加者を集めることの難しさを感じました。当時、私自身が子育て中でしたので、市の中心部へ子供だけで行かせるのはとても心配でした。
そこで、「支部に子供を連れて行くのではなく私たちの方から子供の近くに行くのが良いのでは」と横井前支部長にお話ししたところ、「やってみなさい」と応援してもらえたことで一歩を踏み出すことができました。
-言うのは簡単でも、実際に教室を探すのは難しかったのではないでしょうか。
-先生の生徒さんのデータを見ると、若い生徒さんが多いことに気付きます。それも10代、20代の方ですよね。皆さん、伝統文化こども教室から戻ってきてくださるのでしょうか。そうだとしたら、何か秘訣はございますか。
-小原流の楽しさで戻ってくるというよりも、先生自体が教室運営を楽しんでいて、その先生の魅力でイベント参加者が戻ってきてくださるということでしょうか。
全国各地で活躍している先生にインタビュー! 全国144、国外に89ある支部をご紹介いたします。2022年4月号でご紹介するのは、小原流仙台支部です。支部長の倉田豊燿先生にお話を伺ってまいりました。 全国に144、海外に89ある小原流の支部を、毎号メルマガにてご紹介いたします。
2022年6月号ではHPでの集客やPCによる事務効率化を成功させている札幌支部をご紹介!
子育て中でしたので、お母さん方の強力なネットワークがとても有効でした。
公共の施設をお借りするため何度も足を運びましたが、伝統文化こども教室は「文化庁」から委嘱された事業ですから、丁寧に説明すると安心して、気持ちよく受け入れてくださるところが多かったです。参加者募集のチラシは、地域の町内会や小学校に協力を依頼しました。
最初の開講は30人の募集に対して38名も集まってくださり、びっくりしました。
その成功体験があって、その次、またその次と広げていきました。
(藤谷先生)札幌支部としても小野先生の施策をモデルケースとして参考にしました。伝統文化親子教室は種をまく施策です。転勤族の多い札幌という土地柄、参加した子供たちがここで育つとは限りません。
なので全国どこに行ってもいつか小原流に戻ってきてくれればという思いで行っています。それと、やはり若手の専門教授者育成という意味で重要です。現に小野先生も、伝統文化こども教室の助手を経験されているのですから。
イベントから教室に繋ぐには
HPからの問い合わせで入会という方も、もちろん多いです。
しかし伝統文化こども教室の生徒が戻ってきてくれているという実感もあります。
先日はコロナ禍に高校受験が重なり閉塞感を感じた生徒さんが、子どもの頃に習ったいけばなが楽しかったからもう一度習いたいと問い合わせくださいました。お稽古をしながら弾ける笑顔を見て、私も凄く嬉しくなりました。
指導に際して心がけていることは、ただいけばなを教えるのではなく、いけばなを通じて得られるプラスアルファの部分も教えることです。
こども教室では、いけばなについて、角度や花首の長短を教えますが、花型についてはあまり厳しくしていません。子どもは不思議なもので、正しく教えても、手直ししても、自分の好きなかたちにしてしまうものです。その気持ちを尊重します。その上で、「今日は春が近づいてきて気持ちが良いから、爽やかにお花をいけましょう!」などと言って窓を開く。五感で風や空気、花を感じてもらう。何か分からないけどお花は楽しい。気持ちがいいという体験をしてもらいたいと考えています。
例えば、クッカバラを花材に使用する時に「クッカバラはオーストラリアに棲んでいるワライカワセミのことなんだよ」と教える。ワライカワセミって何?と好奇心が湧くことで、世界が広がりますよね。
私自身も、いけばなで世界が広がった経験が多々あります。
リンドウを使った自然盛花をいけた際、山に生えているリンドウはこんなに立派な花ではないと先生から習って、本物を見たいと登山して実物(エゾオヤマノリンドウ)を見て感動しました。自分のいけばなと自然が繋がっていることを強く感じました。
また韓国から来た留学生に教えていた時のことです。花材にキキョウがありました。キキョウは韓国語でトラジと言うそうです。瞬間、子どもの頃の記憶がよみがえり日本では美空ひばりが歌って大流行した「トラジ」とはキキョウのことだったのかと知りました。いつも高山で出合う「イワギキョウ」と朝鮮民謡の「トラジ」、別々の世界で知っていたのに、それが一つに繋がり、それがいけばなとの出会いで繋がったと思ったときに、楽しさや不思議さを感じました。
白色のキキョウはとても貴重な漢方薬と聞いたのですが、留学生も白いキキョウを知っているということで、より世界が広がりました。
(藤谷先生)その通りです!小野先生のお話はいつも面白くて、支部役員のみんなで集まっていても、先生の話を楽しく伺っています。そうした人間力が、伝統文化こども教室から離れた生徒さんを戻して来ていると思います。
(小野先生)自分ではよくわかりません。教室運営もですが、趣味の山歩きの記録をHPに載せるのも楽しいです。いけばなとは少し違う角度から情報を載せることで、興味を持ってくれる人もいらっしゃいます。
いけばなを入口として知らず知らずのうちに興味を広げてくだされば嬉しいです。自然の中では植物から教わることがたくさんあります。これからも私自身色々な方々から学び、一緒に楽しみたいと思います。
今回お話を伺わせていただいた札幌支部の小野洋子先生からは、メモに書ききれないほどの面白い、興味深いお話をいくつもいただきました。それは全ていけばなとは関係していないようで、先生の手にかかると「いけばなから世界観が広がる」ように感じました。そういった「いけばな+教養」という部分で、教室の魅力を出すことが成功の秘訣と実感いたしました。
小野先生、そして同時にインタビューに参加してくださった藤谷支部長と副支部長の皆さま、誠にありがとうございました!
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