この人に聞く!vol.1 小原流仙台支部 アレイ・ウィルソン先生

アレイ・ウィルソン先生

東北学院大学の経済学の教授として活躍されているアレイ・ウィルソン先生。
担当するゼミは日本経済新聞社主催の「全国学生対抗円ダービー」と「日経STOCKリーグ」レポートコンテストで何度も入選・入賞するほど、優秀な学生を輩出しています。
また、先生は経済学の教授を務めながら、小原流仙台支部では副支部長として活躍しています。
今回のメールマガジンでは、仙台支部の紹介と合わせてアレイ先生にお話を伺いました。

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アレイ・ウィルソン先生といけばなとの出会いは、こちらの記事で紹介しています。


仙台支部の研究会が、学生でにぎわう理由

-仙台支部長より、仙台支部では学生の研究会参加が増えていると伺っています。その学生のほとんどがアレイ先生の生徒と伺いました。きっかけはやはり、部活動でしょうか。

学生には、個人的にいけばなを教えています。
いけばなと学生を結ぶきっかけとして、学生には就職活動の話をしています。
実際、企業は多趣味な人材を欲しています。
大学時代は勉強、スポーツを行うことと同時に、文化面での活動がある方が就職活動で有利に働きます。
文化活動をしていた実績があると、面接の際に話のネタにもなり、評価が高くなるようです。

₋そうして「いけばなを習ってみたい」という学生が、先生のところで勉強しているのですね!しかし、学生はお稽古をしても、研究会への参加まで至らないことが多いと伺います。先生のお教室では、どうして研究会に参加する学生が多いのでしょうか。

そもそも教室で、研究会に出ることが普通という雰囲気を出していることもあります(笑)。
学生は試験や勉強に慣れています。
研究会では様々な先生から学ぶことができ、また教室で勉強したことの再確認ができます。
そうして学びを深める場と捉えてくれますので、参加を苦にする生徒はいません。

また学生たちにとって、研究会には普段の生活で触れる文化層とは全く異なる方が参加しています。
誤解を恐れずに言えば、出席者の多くはいけばなを学ぶ高齢者です。
学生には、「別の文化層の方と触れ合う機会はとても大切」だと教えています。
それは社会に出て、様々な人とコミュニケーションを交わせる力に繋がります。


学生といけばなと、お金のこと

₋お花の勉強以外にも学ぶことがあるという研究会の魅力を発信して、参加に繋げているのですね。しかし、学生にとって、研究会出席のお金は決して安くないのではないでしょうか?

私の教えている生徒はお金がかかることについて、そこまで恐れている様子はありません。
いけばなや研究会は、「1つの遊び」であることを教えています。遊びにはもちろん、お金がかかります。 大学生の教え子が多いので、飲み会が好きな生徒も多いです。
しかし先に話した二つの他にも、「飲み会でお金を使うよりも価値がある」こと、家でYouTube を見て過ごすよりも実りがあることを教えています。
飲み会を一つパスすれば、研究会出席のお金には十分です。
もちろん、研究会の後の飲み会も楽しかったりするのですが(笑)


₋しかし、研究会は飲み会を一つパスすれば出席できる金額だと思いますが、許状申請をためらう生徒も多いのではないでしょうか。なんだかお金の話ばかりで恐縮です・・・。

実際に文化活動を行うことで就職の際に有利となった実績があります。
先輩の姿を見ているので、許状申請をためらう学生は多くありません。
また現在の企業では、副業が認められはじめています。
社外活動を行う力があること、専門教授者として活動できる資格があることは、単なる検定試験よりも企業で評価される向きがあります。
実際に生徒の中には、いけばなを教える資格があることで社内評価が向上した生徒もいます。
准教授を取得すればすぐに専門教授者として活躍できるかは別として、社会では「教える資格がある」ことは評価されます。
そうしたことを伝え、実績を積み重ねたことで、学生の許状申請にも繋がっていると思います。

時代の変化と日本の文化について

-アレイ先生のゼミでは、「経済状況を踏まえて企業がどのような対策を講じているか」研究されていると伺いました。いけばな業界は、「花嫁修業」の時代を引きずりながら現在に至ってしまっているように思います。現在「花嫁修業」は死語となり、いけばなは数ある習い事の一つとなってしまいました。その結果、会員数の減少と、会員の高齢化が進んでいます。こういった現状を打破するには、どのようなことが必要でしょうか。

いけばなに限らず、若者が日本文化から離れている傾向があるのではないでしょうか。
例えばオリンピックでは、柔道よりもスケートボードなどの海外スポーツの方に若者が熱狂しているように思います。
日本文化の魅力は何でしょうか。何を若者に発信すべきでしょうか。原点に立ち戻って捉え直すことが大切なことだと思います。

企業として捉えると、欲しい人材、優秀な人材の確保は難しくなり、辛い言い方をしてしまえば、確保ができなくなってことがあります。
ただそこは、いけばなの考え方と同じです。
限られた花材を使って理想的な作品を作り上げることが、いけばなの面白さの一つです。 与えられたものをどう活かすか、そこを再考することが企業としては重要だと考えます。

日本と日本文化という視点に戻ると、日本文化は企業からの支援やスポンサーが少ないことが課題です。
それは単に、金銭面の支援が少ないことだけではありません。
例えばいけばなの活動で学校や会社を休むことは認められませんが、スポーツであれば別です。
そういった部分での支援が、文化活動では難しい風潮があります。
社会人であれば、働きながら文化活動をしなければなりません。しかしそれで活発に活動できる人はそう多くはないでしょう。それが日本文化の先細りに繋がっていると考えています。

どうすれば社会的な支援やスポンサーが得られるのかということは、大きな課題の一つです。解決策の提示は簡単にできません。
しかし、イベンターや企業と関わっていくことが重要だと思います。
スポーツであればどのようなマイナースポーツであっても、テレビに映ることでスポンサーの露出ができる。
文化に投資することで何が得られるのか、一考の価値があるのではないでしょうか。

またSDGsの取り組みが大切ではないかと、支部の皆さんと話しています。
本部の「いけばな花材プロジェクト」のような取り組みは全国的なものですが、もっと局所的に行うことができないか。
例えば仙台(宮城)または東北の花材を使って、仙台ならではの花器を使ってという地産地消で地域活性化になります。
地域貢献をすることが、いけばなの社会的アピールに繋がるのではないかと考えています。宮城県であればカーネーション、バラ、菊、ガーベラなどの生産地があります。
まだまだ話し合っている途中ですが、そういった盛り上げ方があるのではないかと考えています。


いけばなの指導は、とにかく楽しく!

-そういった時代の変化によって、いけばなを学ぶ層も変わってきていると思います。アレイ先生は25歳以下の生徒に指導をすることが多いと伺っているのですが、学びに来る生徒の変化はありますか。

今の若者と接していると、昔は雰囲気で伝わっていたことが通用しなくなっていると感じます。
例えば、「最初にたてるかたちを学ぶので、美しく花をたててください」、という説明では伝わりません。
なぜ最初にたてるかたちを学ぶのか、なぜ花をたてるのか、なぜこの長さなのか、細やかな説明が必要です。
「この枝は左にかたむけて」という指導も、枝なりの見方、日表と日裏の違い、なぜ右に傾けるより 左に傾けるのか、かたちに込められた背景を説明しなければ、納得してくれません。
言われた通りにやることよりも、「なぜ」という気持ちを大切にしているようです。


₋そのような変化に対して、どのように対応されているのでしょうか。

若者が「なぜ」と思うことに、寄り添う気持ちが大切だと思っています。
写景盛花自然本位を指導するとしても、今の若者は自然に触れることがそう多くはありません。幸いにも仙台には自然豊かな公園が多いので、お稽古の帰りがけに実際の植生を一緒に見たりして、課外授業をしています。
もちろん、楽しみながらですが。
学びに来る人の成長を指導者としても楽しみながら教室外・稽古外でも教えを取り入れていくことが大切ではないでしょうか。生徒とは縦の関係ではなく、肩を並べて、という意識が大切だと実感しています。

そしてとにかく、楽しく過ごすこと。楽しく、楽しく。生徒は笑い声が大きくて支部で怒られることもしばしばありますが(笑)。とにかく楽しいところに、人は寄ってきます!

仙台支部支部長へのインタビューと合わせて、急遽アレイ先生へのインタビューを組ませていただきました。
「楽しく!」をモットーに活動されている先生らしく、下準備の足りないインタビュアーに対しても常にあたたかい笑顔で対応してくださりました。
先生のもとで育つ生徒さんたちが本当に羨ましく、大学時代に戻りたくなりました。
アレイ先生、ありがとうございました!!!

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