メルマガ家元教場 vol.1 「桃の節句のいけばな」 担当:小原宏貴

先月号から告知、応募の始まった「メルマガ家元教場」。
20日間に満たない応募期間ではありましたが、沢山の方からご応募いただきました。
ご応募いただいた皆さま、誠にありがとうございます。

初回のテーマは「桃の節句のいけばな」。
古来より邪気払いの力があると信じられてきた桃。3月3日上巳の節句、桃の節句に欠かせない花材ですが、それに先駆けてお稽古やお家で楽しまれた方も多いのではないでしょうか。

応募いただいた作品のうち、3作品を今回担当の家元により選抜、ご指導いただきました。



「桃の節句のいけばな」

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「じゃじゃ馬の節句」mana様
桃の花を菜の花と生けた後に少し趣を変えてムーンライト花器に生け変えてみました。
ドラセナ・コンシンネ・レインボーとコデマリを合わせて少し洋風な桃の節句を!じゃじゃ馬の女の子の節句です(笑)

家元のコメント
桃はなんといっても直線的で伸びやかな姿が特徴です。子の真っ直ぐな成長を願う気持ちが込められたその姿ですが、単調で動きのない枝ものとして扱いの難しい花材でもあります。

桃・菜の花・コデマリの取合せは定石ですが、ムーンライト花器(月光樹海)にいけることにより桃の枝の足元が自然と締まりより伸びやかに感じられます。足元のドラセナの株状の広がりと桃のまっすぐな線との対照的な構図がとてもユニークで、今回の題名の「じゃじゃ馬の節句」にピッタリだなと思いました。



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「笑み揺れて」ikebanajin 矢井豊功様
健やかにと想いを馳せながら 桜柳をこきまぜて
笑み満々の嬉し色 桜ではなく アマリリスでもなく
百合水仙を高く揺らして 春の錦といたします

家元のコメント
小原流ではアマリリスは主材のイメージが強いですが、この作品のように満開の花を葉を用いず中間枝として使うのも新鮮ですね。線の細いアルストロメリアをあえて主材にされたり、コデマリ・雲龍柳・桜と数種類の枝ものを用いた取合せだったり挑戦的でダイナミックな点が新鮮でした。

写真を撮る際に背景が黒、置き場所が白だと露出の調整が難しいので、全体を白にまとめた方がより作品を綺麗に写しやすくなります。



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「雛も喜ぶ小品花」あやめ様
京都に旅行した折に求めた立雛は、掌に収まるほどの小ささです。その雛に桃を生けました。
桃は立つ姿が自然なのですが、そうすると雛と乖離してどうしてもしっくりきません。そこで思い切って桃の枝を雛に向けて傾けてみました。どことなし雛も喜んでくれているような小品花ができました。

(花材:桃・菜の花、花器:青磁壺、台:職業訓練校制作)
家元のコメント
桃一枝、菜の花一本と立雛という要素が全体的におさまりよく卓に配され余白とのバランスも綺麗ですね。

桃のまっすぐな枝と丸みのある器との対照的な出会いが目をひきつけます。

作品と共に置き合わせを用いた構成のなかで、それぞれが調和した収まりの良さがぐっと空間を引き締めていて良い作品だと思いました。



総評

桃と菜の花は定石の取合せですが、毎年見ても「またか...」とは思いません。冬の終わりから初春にかけての季節の移ろいを感じさせ、春の訪れが待ち遠しくなる取合せです。

桃といえばやはりお雛様に関連する作品が多かったですね。桃を通じてお子様のことを思ったりお雛様を飾ってくれていた親御さんのことを思ったり。誰かのことを思って桃をいけて飾る姿が垣間見え、すごく温かい気持ちになりました。

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「桃の節句のいけばな」、いかがでしたでしょうか。桃の節句に先駆けての募集締め切りとなりましたので、いただいた作品のほとんどが蕾のままの桃の花の作品でした。
応募いただいた沢山の作品の桃の花が、桃の節句の頃にはふっくらと柔らかに花ひらいていたのではないでしょうか。

来月号は「春の花木のいけばな」をテーマに作品を募集いたします。
指導担当は小原流研究院教授の横東宏和先生です。
一年で一番、華やかな草花が出そろう季節のいけばな作品をお寄せください!
皆様のご応募、心よりお待ちしております。

応募方法


次の情報をメールに記載の上、作品データを1枚(できるだけ高画質のもの)、小原流マーケティング課までお送りください。ご応募いただた中から3作品を掲載させていただきます。
・現在の小原流の所持資格
・会員番号
・氏名(ペンネームでも構いません)
・作品タイトル
・作品について100字程度の紹介文

送信先:小原流マーケティング課 [email protected]
※当選者の発表はメールマガジンの配信をもって代えさせていただきます。

2023年3月号のテーマ

「春の花木のいけばな」

担当:横東宏和

募集締切:4月6日(木)

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