この人に聞く!vol.23 小原流長野諏訪支部 上田豊翠先生

上田 豊翠先生
1987年5月一級家元教授取得
長野諏訪支部幹部、副支部長、支部長、参与と歴任し、今でも100名近い生徒を指導している上田豊翠先生。
生徒がたくさん集まる秘訣は「伝統文化こども教室」にあるそうです。
上田先生に、どのようにこども教室から個人教室に繋げているのか、お話をお伺いしました。

※写真一番左が上田先生、右から2人目が師匠の牛山豊梢先生
小原流との出会い
-先生といけばなの出会いについてお伺いさせてください!
いけばなに関わらず、母が芸事に熱心だったことがきっかけです。いけばな以外にも日本舞踊なども一緒に習っていました。
師匠の牛山豊梢先生に従事して、習い始めた当初から長野諏訪支部の研究会にもずっと出席していました。
親しくしていた友人にお願いされて、20代で教室を開講しています。弟にも教えていました(笑)
しかし主人の転勤で長野県内の木曽福島に引っ越すことになりました。
33歳だったのですが、「お花はこれで一区切り」と思い、生徒は牛山先生に預けて、購入した看板も全て置いて新生活をはじめました。支部や先生にも御礼の挨拶に行ったと思います。

-一区切りされたのにいけばなを今でも続けている理由は何でしょうか
数か月もたたないうちにお花がないことが寂しくなってしまいまして(笑)
木曽福島でも、どうしてもみんなにお花を教えたくなりました。
近所のお花屋さんに相談したら、お花屋さんが生徒を呼んでくれて。そうこうしているうちに様々な方から声をかけていただき、教授者活動を再開することにいたしました。長野諏訪に置いてきた看板も取りにいって(笑)。電車で1時間半をかけて研究会にも復帰しました。

4年くらい経ち、今度は子育ての関係で松本に引っ越しました。
松本でも教室を開いたのですが、木曽福島の生徒も放っておくわけにはいきませんので、6年くらい通っていました。その間に専門教授者に育った方や、その後松本まで通ってくださる方もいらっしゃいました。
松本でも「お花を教えたい」と主人に相談したら、職場の方でお花をやりたいという人が声をかけてくださって、その生徒から順々に広がっていきました。
牛山先生に預けた弟も私の社中に戻ってきて、50年くらいいけばなを続けているのではないかと思います。
兄弟で凄く仲が良いのは、お花を通してコミュニケーションを取っているからかもしれません。
月三回、お稽古には生徒の立場で来てくれています。
多くの生徒を集める秘訣
-沢山の生徒を有していると伺っています!
伝統文化こども教室です。その施策が始まった頃から続けているのですが、お子さんと、それからお母さんが私の教室に来てくれています。「うちにいらっしゃい!」と声をかけているのではなく、「続けたい」と言ってきてくれています。大学での指導経験があるので、それが生きているではないかと思います。松本大学と、松本大学松商短期大学部で、「芸術と文化」という授業が開講されることになった際に、非常勤講師として入ってほしいという要請を頂戴しました。
お引き受けしたのは良いのですが、「小原流の先生が大学の授業を教えるなんて!」と、様々に準備いたしました。
授業時間は90分から120分、大学からは授業内容についての指示は出ません。
ただ大学の授業ですので花をいけるだけではなく、講義を一生懸命にやらないと思いまして。工藤昌伸先生の「いけばなの道」はもちろん、植物史の本などを読み漁りました。正しくなくちゃいけないですから(笑)。それから昔、研修課程に通っていた頃の講義をテープに録音していたんです!そのカセットテープを毎日毎日聞いて、資料を作りました。参加生徒の単位をつけなければいけないので、筆記試験も作りましたよ。
研修課程には遊び半分で行っていましたが、教える側に立つときに役に立つ知識をいただいていたのだと実感いたしました。

結果的には13年から14年務めさせていただきました。
大学を卒業した生徒が個人教室に来たり、生徒の結婚式に呼ばれたり、子どもが生まれたら連絡が来たり。ここでも様々な出会いをいただけました。少し忙しかったけれど、楽しい思い出です。
この経験が伝統文化こども教室にも生きています。花を教えるだけではなく、いけばなとは何か、植物の大切さ、生き物に向き合うこと、日本にどうしていけばなが残っているのかなどをこども教室では必ずお話するようにしています。
使用する花材もただ花の名前を教えるのではなくて、花材の知識についてかなり時間を割いて伝えます
子供を子供扱いしないことも大切だと思うのですが、そうした教室を開くと付き添いで来ていたお母さんがメモを取り始めます。そうして「いけばなって面白い!」と思った方が、親子で個人教室に参加してくださいます
-今後の活動について教えてください!
支部長を10年務めてやり切ったという思いですし、年齢的にももうそろそろ...と思うのですが、気楽に楽しく続けていけていければ良いなと思っています。お花をいけることだけではなく、様々な方との出会いがありますから。人との関りって本当に大切だと思います。
