オンラインレッスン指導を始めて今年で13年目!小林千峯先生にお話を伺いました。
2022年7月号のメールマガジンの記事で紹介させていただいたオンライン版「VOGUE Germany」掲載作品をいけたドイツ ボン在住の金子亜希子さん。金子さんは小原流東京支部名誉幹部の小林千峯先生から、オンラインレッスンを中心にお稽古を続けています。
小林先生は新型コロナウィルス感染拡大の影響で注目を浴びる前の、なんと今から13年前からオンラインレッスンを開催していました!
本号のメールマガジンではそちらの記事と合わせて、小林先生にオンラインレッスンを受講している生徒やご指導について、お話を伺いました。
-オンラインレッスンの開講を決めたきっかけを伺わせてください。
きっかけは夫です。インターネットが身近なものとなったのは2000年頃でしょうか。
夫が仕事でPCを触っているので少しその分野に詳しく、HPを作ってみたらどうかと声をかけられたのがはじまりでした。
私は一切PCには触れませんでしたので気乗りしなかったのですが(笑)、あれよあれよという間にHPが出来上がっておりました。
今では私も少しくらいは触れますが、メンテナンスや更新は夫にお願いしています。
HPができたのが2004年。小原流で個人ページを作ったのは、最初期だったのではないでしょうか。
そうしてPCに触るようになったのが、そもそものきっかけのように思います。
HPを作成したことによって、教室へのお問い合わせも増えました。
小林千峯先生のHPはこちらからご覧いただけます。
-HP経由で、オンラインレッスンのお問い合わせがあったのでしょうか?
最初からオンラインレッスンの受け入れをしていたわけではございません。
教えていた生徒がイギリスに帰国することになって寂しいという話していた時に「Skypeを使ってレッスンしてみては?」と夫から提案されました。
それで試しに、やってみることにいたしました。
するとHPを運営しているので私がPCに抵抗がないことと、いけばな経験のある生徒だったので画面越しでも話が通じやすく、指導ができたのです。
そうして徐々に自信がついて、オンラインレッスンを受け入れるようになりました。お問い合わせをくださる生徒は、ほとんどが外国に住む日本人です。
-対面でも難しいいけばなの指導ですが、オンラインレッスンならではの難しさはございますか?
まず2Dであるということ。正面から見ると奥行きが全く分かりません。作品を回してもらったり、カメラを右から写すようにしてもらったりして、奥行きの確認をしています。
それから枝の整理です。対面だと伝わる「そこの枝」「それとこれの整理」と言っても、一切伝わりません。
「向かって右側、枝が十字になっているところの上の枝」など、具体的に言葉を尽くして指導いたします。
枝が暴れているニシキギの作品は指導するのがものすごく大変だったのですが、お互い満足のいくものになりました(笑)。
-瓶花の留めの指導はオンラインではどのようにされているのでしょうか。
とても難しいです!最初は苦心いたしました。
なかなか言葉だけで教えても伝わりません。そのため、ホワイトボードに絵や言葉を記入し、お稽古などで余った枝を使用して留め木を作って、留めるところを写すようにいたしました。
そうするとイメージがつきやすいようです。
いまではオンラインの生徒は盛花より瓶花の方が上手なくらいですよ(笑)。
-実際に作って見せると分かりやすいというテクニックは、対面の指導にも応用できそうですね!オンラインの生徒のお花の調達はいかがされているのですか。
一番大変なのは花材調達です。ご自身で準備してもらうのですが、日本とヨーロッパでは花卉業界の状況が異なります。 まず、ヨーロッパは花がとにかく大きいです。そして葉を重要視していないので、もともと整理されていたりします。また葉ものも枝ものも充実していません。店主と仲良くなると取ってくれたりするようですが、1杯のいけばな花材のために手配してくださることはほとんどありません。
あとはクリスマスやハロウィンの行事の前になると、花屋さんはその行事一色になります。行事後は長いお休みに入ってしまったりするようです。
そうした海外の花屋事情を聞くと、日本の花材がいかに豊かであるかということが分かります。
条件が違うことは承知しているので、「手に入る花材で、何でも良いよ」と伝えているのですが、生徒の方がいけばならしい花材でのお稽古がしたいらしく(笑)。
鉢物やお庭で花材を育ててくれたり、嵐の後の森や公園などで花材を集めていたり、崖に這いつくばって野草を取ったりと、色々と工夫してくれています。
ただ、条件が整わない花材でも良し!と割り切って指導しています。
小原流の考え方、作品の骨格、いけかたが伝われば良いと思っています。
たとえば「琳派調いけばなもどき」、「文人調いけばなもどき」と言って、本来は合わせないであろう花材であっても指導しています。もちろん、本来あるべき取り合わせについては伝えています。写景盛花の指導の際には、日蔭の代わりにパセリや杉の葉を使うこともしばしばです。
先日「小原流挿花」で紹介されたバラの755も、私たちの方が先に実施していましたよ(笑)。
-日本では学ぶ花型に合わせて発注という流れとなりますが、海外では花を見てから指導する、逆の流れですよね。カリキュラムの消化はなかなか難しいのではないでしょうか。
レッスンで使用する花材を私が知るのも当日となりますので、カリキュラムを順番通りに消化することは不可能です。
各資格の必修科目を順番通りに指導するのではなく、「ならぶかたちをやりたかったけど花材的に盛花にしましょう」など、臨機応変に対応しています。
しかし全くカリキュラムを意識しないわけではなく、オンラインレッスンの生徒は日本人ですので、一時帰国の際に集中して、対面で稽古をします。そうしてカリキュラムの消化(海外では購入不可能な花材の様式本位など)や技術のフォローをしています。
オンラインレッスンのみしか受講しておらず、「何だか技術も知識も伴っていないようだ」という生徒を進級させるということはいたしません。
ただ生徒が自分で集めた花だからと言って、素敵じゃない、いい加減な指導になる、ということはございません。
オンラインの生徒の作品は、教室のグループLINEに共有しています。
小原流の表現ではあるものの、日本とは異なる花材や取り合わせの作品が並ぶので、さながらインターネット花展のような様相です。
それを見た日本の生徒から「私もこんなものがいけたいのですが」と相談されたりするくらい華やかです。
月謝については3か月ごとに、海外送金していただいています。手数料の問題で、1か月ごとだと可哀想ですので。
予約についてはこちらの指導できる日時を提示して、それに合わせて予約をしてもらっています。現在オンラインレッスンの生徒は4名いるのですが、ほとんど曜日と時間は固定となりました。
進級の手続きは私が所属している東京支部で行っています。
-10年以上オンラインレッスンを続けてきて、思うことはございますか。
オンラインレッスンを続けて今年で13年です。
その中で思うことは、まず海外の日本人生徒は、日本の文化に飢えています。そのため非常に知識に貪欲で、熱心な生徒ばかりです。
4人中2人が指導者として活動していたり、レストランや美術館での挿花を依頼されたり、作品がサントリーの広告に起用されたりと様々なことがございました。
日本に帰国した際にタイミングが合えば、地区別教授者研究会や研修Ⅰ期も受講したいとも言っています。
先にお伝えした海外の花屋も少しずつ日本の花が手に入ったり、少々高くても良い枝ものが手に入ったりするようになってきたようです。
試行錯誤をしながら続けてきた努力と忍耐が今、実った気がしています。
私自身の教授者生活も、今すごく楽しいのですよ(笑)。
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