全国支部紹介vol.10 小原流和歌山支部
小原流は全国に144、そして国外には89の支部があります。皆さんが在籍している支部がそうであるように、それぞれの支部に設立のあゆみや特徴、現在の取り組みなどがございます。本ページでは、毎月、全国の支部を1支部ずつご紹介いたします!今回ご紹介するのは小原流和歌山支部です。五代支部長 福永 八千代先生にお話を伺いました。
小原流和歌山支部 支部長 福永 八千代
1961年 小原流入門。
ご出身は神戸市。幼い頃から芸術やお花にご興味をお持ちだった福永先生は、神戸市灘区にお住まいだったこともあり、身近な存在だった「小原流」に入門。その後、和歌山に転居され、和歌山支部の振興に尽力された西村萠雲先生(二代支部長)に師事。いけばな活動とともに、造形作家として、また和紙と墨を使った作品制作(日本美術倶楽部HP)など、芸術家としても活躍されている。
和歌山支部の歴史
和歌山支部の起こりは昭和18年の国風会和歌山支部の創立から始まります。
初代支部長は西村晴雲先生でした。
その後、戦争の激化で支部活動を一時中断したものの、研究会開催や百貨店での支部花展開催など活発な活動を行い、昭和38年に「財団法人小原流和歌山支部」と改称し現在に至ります。
国風会和歌山支部から数えて来年で支部創立80周年。
歴代の先生方と紡いできた和歌山支部の歴史を絶やすことなく、引き続き精進してまいりたいと思います。
福永先生と和歌山支部の歴史~支部長就任まで
-福永支部長が和歌山支部研究会に参加されたのはいつ頃ですか?
和歌山への転居後、ご縁があって西村萠雲先生に師事することになりました。
そして1980年を過ぎた頃でしょうか。そこから和歌山支部の研究会にも参加するようになりました。
-当時の和歌山支部研究会はいかがでしたか?
着物をお召しになられた先生方もいらっしゃり、やはりビシっとした雰囲気でしたね。
まだ一般会員だったので研究会以外の会合には出ていないので支部全体がどうなのかは分からなかったですが、研究会はとても緊張感のある場所だと認識していました。
上の資格の先生方と気やすく喋られる雰囲気ではなく、遠くから先生方のお姿を眺めるくらいでしたね(笑)。
-そこから研究会で研鑽を積まれ、1990年に幹部になられたのですね。
はい、親先生の西村先生から薦めていただいて就任しました。
研究会参加当初は幹部に足る資格を取得していなかったので、西村先生から「はよ取り、はよ取り」と背中を押していただき、二級家元教授になった時に幹部になりました。
「私なんかで良いのかな・・・・」と思ったのですが西村先生からとても熱心に推挙していただきまして(笑)。
その時はのちに支部長になるなんて思いも寄らなかったのですが、幹部になって支部の内情や雰囲気などが色々と分かりました。
多くの方と話し、相談し、色々と考えたことが、今に繋がっているんだと感じますね。
-そして、2010年に支部長に就任されました。
今の本部のように、当時の和歌山支部でも色々な事象から支部変革の声があがっていました。
そのことが支部内外で感じ取られる状況の中、理事長よりご推薦いただいた次第ですが、たまたま居た私が就任したという感じです(笑)。
-就任当時、どんな気持ちでお受けになられましたか?支部運営についての不安や悩み、または自信などはございましたか?
かなり躊躇しましたが、ご連絡いただいたお電話の言葉で、躊躇っている時ではないと思い、ご指名いただいたことにお応えできるようにと気持ちを切り替えました。
お受けした限り持てる限りの力と知恵を駆使して新たなカタチで支部運営をしていくことを自分自身に誓いました。
もちろん、会員の皆様を大切に、尚且つ協力をいただきながら支え合うことが基本です。
また、家族にも私の置かれた場所・状況と決意を伝えました。
家族からは冷静な助言と温かな応援を貰ったことを今も大事にしています。
自信はなかったですが、ともかく前を向いて一生懸命進むことが私の課題でした。
ひたすら会員と共に誰にでも同じく公平に心合わせて楽しく進めていけるようにと考えています。
-支部長に就任されて最初にどんな事をされたのですか?
一般の会員の方も含めた情報共有ですね。
「現在、こんな事をしようとしています。」というような今の和歌山支部を会員の皆様にもお伝えするようにいたしました。
それまでもマンパワーや時間的な制約を抱えながら支部運営に尽力してくださっていましたが、役員の皆さんと協同して出来る限り色々なインフォメーションをお伝えするようにいたしましたら、それによって幹部同士のコミュニケーションも密になりました。
これが、人と人が繋がって和気藹々と活動している現在の和歌山支部に繋がっているように感じます。
- 和歌山支部 研究会の風景
支部研究会について
-現在の研究会の雰囲気はいかがですか?
参加者の皆様からは、点数だけにこだわらず真に学ぼうとされる姿勢が伺えます。
また、従来は活気ある雰囲気で講評・寸評も多く頂き進行していますが、この数年はコロナ禍で状況が変わりました。
時間短縮や日程変更など研究会の組み立て方も変化して、寸評の際には該当者以外の方は周りを囲まないように、また、大声を出さないようにと伝えています。
会員の皆様の中には、もっと研究会を楽しみたい、ゆっくり学びたいと思う気持ちがあふれているように思いますが、今は忍耐の時だと理解して頂き、クラスターが発生しないように先ずは研究会が開催できる状況づくりに重きを置いています。
-支部研究会はどのような流れで運営されているのですか?
基本的に、役員全員で花材・挿法といった研究テーマなどを検討します。
これは役員みんなの技術や知識、理解の確認としての側面もあります。
どんな方でもそうですが、新しく幹部になられた方は初めての経験ですし、いろんな不安もあるかと思います。
研究会の花材決めにしても分からない事や不安な事をみんなで共有して、知らない事を無くしていくことを目指しています。
例えば挿法と花材の合致性といった重要なことから、取合せの書き方などの細かな事までみんなで話し合っています。
幹部自身の勉強の場としても良い機会ではないでしょうか。
その後は、講師の先生との内容の確認し、取合せなどを皆様に送付します。
出席者集計を行い、研修部によるお花屋さんへの花材確認。
会計部による花材費打合せや当日の受付及び会費集金。
研修部による花器、備品の準備。
そして当日は、全役員が会場に趣いて研究会を実施し、賞状や開催後の書類などを準備しています。
和歌山市部は幹部役員が仲良く、力を合わせて進行しています。
一般参加会員の方も、余計な緊張感を持たずに参加していただけていると思います。
-コロナ禍で研究会参加が困難な方もいらっしゃるかと思います。
会員に研究会への参加を促すために実施されていることはございますか?
コロナ禍の今は出欠については会員の意思に任せています。
事情があって外出できないとか、個々に何らかの出席できない事情がある時は無理をしないようにと支部からも伝えています。
欠席理由がコロナ関連の事で有ればなおさらです。
体調が思わしくない事を除いては、各自に出席を呼び掛けています。
まずは先生には生徒さん確保をおねがいし、続いて研究会参加をお願いしています。
一部の先生の力だけで成立している研究会の状況は最も悩ましい事です。
呼びかけだけでは効果が出ない状況の解決策を更に講じる段階だと感じています。
-コロナ禍での研究会開催は困難なことばかりだったと思います。
コロナの流行当初の支部はどんな雰囲気でしたか?
今でこそ誰もが罹患する可能性があることは理解できますが、当初の状況は誹謗中傷など感染すると一大事!
ピリピリした状況が続きました。
そんなことから最初の1年間は緊急事態宣言発令に応じて中止または日程変更を行ない、宣言解除になってから人数制限、時間分割、大会場確保など出来る限り感染防止策を講じました。
2年目からは、このままだと会員の心も塞ぎ意欲も減少するのではと、その危機感の方が先立ち参加会員が少なくても研究会は何としても開催しようと切り替えました。
緊張感は増すばかりですが、会場換気・距離をとる為に部屋は増室し、テーブルも1テーブル1名に、消毒・アクリル板設置など出来る限りの感染防止対策を整えて開催しました。
参加に関しては会員ご本人の意思を尊重して無理には進めずにお返事を待ちました。
2年目からは中止することなく順調に開催出来ています。
身近にコロナ感染した会員さんもいますが、普通に報告いただき次には元気に参加してくれています。
-どの支部でも次世代への引継ぎが課題となっています。
和歌山支部の現状と、課題に対する取り組みをお伺いさせてください。
社中の若い会員も他団体合同の会合に出来るだけ出てもらうようにしていますが、その際、「若い人が多くていいね」と他流の皆様から言われています。
時代は移り変わり、日々変化しているなかで考え方も多種多様。
いかに効果的に引継ぎが出来るかと日々試行錯誤しています。
- 和歌山支部 役員の先生方
先生が感じる「小原流」の魅力、支部長として大切な事
少し個人的なお話を記載させて頂きます。
その昔、私が若い頃に「新進作家展」に初めて出品のご推薦を頂き、会場で5世家元 小原夏樹先生にお会いしました。
夏樹先生が推薦して下さったと伺ってはいましたが緊張のあまり若かった私はご挨拶だけで何も言えずいたところ、夏樹先生が私の緊張感を察知して下さったのでしょう。
和歌山のお花の現状、特徴を交えて、あたたかなお言葉でお話をして下さいました。
私は30代後半だったと思いますが、先生の大きさに感動しました。
一人一人を大事にされている事が感じ取れ、以後、私のお花への思いは強い意志によって保たれています。
次に、私が支部長になるにあたり初めての支部長会会合の折、神戸・懇親食事会の席に着かず困惑している私に対して、理事長が遠い席から目ざとく見つけてくださって優しくサポートしていただきました。
その手のしぐさやお声のトーン迄しっかり覚えています。
また、青年部会場で激励のお言葉もいただき忘れられません。
私は益々頑張らなければとの思いを強くしました。
そして、現お家元。
宏貴先生には西村萠雲先生が亡くなられた後に青年部懇親会の席でご結婚発表された折、私に「西村先生にも報告しておいてね」と仰ってくださいました。
なんてお優しい言葉と危うく泣きそうになりました。
また、和歌山で開催された国民文化祭の折、私の相談事にたいしてメールでいただいたお言葉にも感謝の思いが尽きる事が有りません。
何をお伝えしたいかと言いますと、私が感動して未だ忘れられないお言葉や身近に感じとれた優しさ・強さを頂いたことで今の私が有ります。
宏貴家元は、それほど影響力がお有りで人を前向きにさせるオーラのある方。
会員のあこがれです。
かなりの激務でいらっしゃいますが、そんな感動を得られる機会があれば、各支部の会員の士気はとても高まるように感じます。
「退会」という悲しい言葉も消え、次の研究会を心待ちにされるかもしれません。
未だお家元にお目かかったことがない会員の皆様と、私が得た感動を共有できる日が来ることを心待ちにしています。
そして支部長として大切にしていることは、
①感謝の気持ちを忘れない(言葉や態度で表す)
②何か不具合があったとしても全責任は私
③平等に話を聞く
④全体の人間関係をスムーズに築く
この4つを胸に抱きつつ支部運営を行なっています。
やはり思っているだけでは人に伝わりませんので、褒めるべきところも、注意を促す部分もしっかりと言葉で伝えています。
現在の和歌山支部は和気藹々とした雰囲気で活動していますが、このような雰囲気も一朝一夕では出来ず、私を含め支部役員の皆様全員のお力添えで成り立っています。
今後も、滑らかな人間関係の上に、次世代にバトンを繋ぐ方法を模索していきたいと思います。
和歌山支部の今後の予定をお聞かせください。
まだ未定なのですが、ダイワロイネット和歌山の展示ブースの予約が取れたらですが、12月にXmas・お正月用造形作品展示を考えています。
決まりましたらメールマガジン、小原流HPへの掲載をお願いいたします。
支部の変革期に就任され、現在まで和歌山支部の円滑な運営にご尽力されている福永八千代支部長。
和歌山県いけばな協会主催のいけばな体験教室を翌日に控えたお忙しいなかお話しをお伺いしました。
いつも明るく、ポジティブにお話ししてくださる福永支部長には、「この人に聞く!」にもご登場いただいています。
こちらでは、専門教授者とし、そしてアーティストとしての福永先生にスポットを当てています。
ぜひご覧ください!
この度は、お忙しいところお時間を頂戴し本当にありがとうございました。
今後とも何卒宜しくお願いいたします。
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『ふれあい文化の祭典~兵庫県いけばな展』に家元が出品中!
現在開催中の秋の神戸を彩る毎年恒例の花展『兵庫県いけばな展』に家元が出品中!家元は前期の展示となりますので、お近くにお越しの際はぜひ足をお運びください。
詳しくはこちらから。
<<家元出品>>『創立55周年記念 日本いけばな芸術展』が大阪で開催されました。
今年で創立55周年を迎えた公益財団法人日本いけばな芸術協会主催の『日本いけばな芸術展』が、大阪髙島屋で開催されました。
詳しくはこちらから。
母校・甲南大学で、家元が「伝統文化いけばな」について講義を行いました。
2022年11月7日(月)、家元が母校である甲南大学の講義『伝統文化を学ぶ』に登壇しました。その模様をお伝えいたします。
詳しくはこちらから。
『第56回 いけばな大阪展』に大阪支部が出品されました(大阪支部)
10月18日(火)から23日(日)まで開催された『第56回 いけばな大阪展』に大阪支部の先生方の作品が展示されました。先月の前期作品に続き、後期の作品もご紹介いたします。
詳しくはこちらから。