全国支部紹介vol.9 小原流旭川支部 前編

小原流は全国に144、そして国外には89の支部があります。皆さんが在籍している支部がそうであるように、それぞれの支部に設立のあゆみや特徴、現在の取り組みなどがございます。本ページでは、毎月、全国の支部を1支部ずつご紹介いたします!今回ご紹介するのは小原流旭川支部です。七代支部長 川村 菜穂先生にお話を伺いました。

小原流旭川支部 支部長 川村 菜穂

1978年 小原流入門。
入門時より熱心に小原流いけばなの技術習得・研鑽に励み、専門教授者の資格登録以降、多くの生徒を育成、いけばなの指導に尽力している。また、伝統文化いけばなこども教室において子供を対象とした文化活動に貢献、旭川市立東光中学校においてもいけばな講習会を毎年継続して開催するなど、その活動は多岐にわたる。現在は、小原流旭川支部 七代支部長として支部運営に活躍中。

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2008年に行われた旭川支部60周年記念講習会の写真。

旭川支部の歴史

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支部設立当初 昭和23年頃の写真

旭川支部のはじまりは、昭和初期に花田露蓉先生が、東京から平一驚先生、光波先生を招き盛花講習会を開いたことに始まります。
その後、札幌から八木敏先生を招いて研究会が開催され、それを機に国風会旭川支部が誕生いたしました。
1980年に行われた副家元時代の小原夏樹先生による特別講習会も開催いたしました。
歴代の支部長や役員の皆様の力により、旭川西武百貨店での支部花展開催や諸流展への出品などの活動を絶えず続けてきました。
特に前支部長の井上豊則先生の活躍により、伝統文化親子教室の発展や全て手作りのみんなの花展など、旭川支部ならではの活動に繋がっています。
井上先生が大切にしていたことは「会員目線」でした。私もそれに倣って現在の活動を続けています。


准教授在籍者が多い理由

-支部在籍者のデータを拝見すると、准教授の在籍人数が多くいらっしゃることが分かります。川村先生自身も若年層の生徒が多いですよね!どのような集客をされているのでしょうか。

准教授の生徒が多い理由は、文化庁支援の伝統文化親子教室によるものが大きいと思います。
旭川支部では伝統文化親子教室を、「教えることを楽しむ」機会として利用しています。
旭川支部在籍の准教授の方中心に「やってみない?」と声をかけて担当していただいてます。
准教授を取ると教えることができるという案内はしているのですが、自分が指導するなんてまだまだと尻込みする方がほとんどではないでしょうか。
だたこういった機会が与えられれば、「やってみようかな」という気になってくださいます。
教えることで、准教授になりたての人の勉強意欲に火が付き、お稽古を継続することはもちろんのこと、進級意欲も湧いてくるはずです。
旭川支部では、高校生が伝統文化親子教室を担当することもあるんですよ(笑)。
准教授の専門教授者登録もありましたが、こうした施策が功を制しているのかなと思っています。

参加いただいた方にとっては単発レッスンとならないように、受講前に1年間に8回のカリキュラムがあることを提示しています。「季節の花を1年間通して勉強してみませんか」という案内にして、お稽古を継続していただくように促すのです。参加者と1回きりの出会いにならないように連絡先(メールアドレス)をいただいて、後追い連絡も欠かせません。
年間を通してお稽古を続けていただくことで、子供か親のどちらかがいけばなを大好きになったとします。親が熱心になると子供も一緒にお稽古してくださる、また子供が熱心になると親が喜んで一緒にお稽古してくださいます。

また伝統文化親子教室のカリキュラムの最後は「みんなの花展」への出品にしています。大切な機会ですので、支部で子供の出品料の予算を組んでいます。
子供がお稽古を続けていくには、親御さんのサポートが欠かせません。いけばなのお稽古は音楽やスポーツと違って想像しにくいのではないでしょうか。ましてや最初のうちは「たてるかたち」と「かたむけるかたち」を学ぶだけなので、いけばなの世界の広がりが理解されにくいと思います。「自分たちがどのような価値にお金を出しているのか分からない」という状況では習い事を続けさせないでしょう。
伝統文化親子教室のカリキュラムに「みんなの花展への出品」を入ることで、親に子供の作品を見てもらいます。
まず自分の子供の作品が展示されていることで、親御さんが喜びます。そして様々な表現が並ぶ花展会場を見ることで、小原流いけばなの世界観もご理解いただきます。
「自分の子供にもっとこんな花を生けてほしい」と親を前向きな気持ちにさせることで、子供がお稽古を継続してくださる確率が格段に上がります。花展を機に親の方がお稽古に習いに来ることもあるんですよ(笑)
毎度うまくいくわけではありませんが、大切な機会です。

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旭川支部みんなの花展の作品



支部活動には目的意識が大切

-みんなの花展で体験会を開くという話は伺うのですが、出品してもらうことで会員獲得を目指すというお話は初めて伺いました! 

そうでしたか(笑)!何か参考になれば幸いです(笑)。
みんなの花展はそうした会員獲得はもちろんのこと、会員満足度の向上を目的に掲げています。「会員目線で考える」これは前支部長の井上豊則先生からの教えです。みんなの花展を支部花展の一部のように考えてしてしまうと、「支部のやりたいこと」に出品者が合わせるような花展になってしまいがちです。設けられたテーマに沿って、花材のチェックを受けて、手直しをされるという流れになってしまうのではないでしょうか。
旭川支部では、花展の醍醐味は、自分たちが思い思いの花を、好きなようにいけることだと思っています。
そのためみんなの花展を「会員が好きなようにいけて、楽しんでもらうためのイベント」と位置付けています。入場者人数は関係ありません。ディスプレイも一流の花展を目指しません。その代わり出すからには絶対に楽しんでもらいます。
小原流の表現を学ぶにはカリキュラムが大切です。しかし決められた器と花材ばかりでは気詰まりになってしまう日もあるでしょう。息抜きの意味も込めて「みんなの花展くらい型破りにやってもいいじゃない!」という気持ちで出品いただいています(笑)。
お持ちでない場合は先生から貸し出すこともございますが、基本的には器も自分でご用意いただきます。花材取り合わせも自分で考えていただきます。作品のうまい下手ではなく、やりたいように、お花を楽しく生けてもらえれば良いと考えています。
専門教授者の先生の中には、生徒が心配で手直しをしたがる先生もいますが、この日はグッとこらえて、出品者の思いのままにしていただいています。出品者が相談に来たときは相談に乗りますが、出品者自身で直してもらっています。
ただ師範科Ⅱ期の会員が写景自然をいけるというようなことはないように、表現は資格に応じて限定しています。出品者側の「今度はあの花をいけたい」という進級意欲の向上に繋げる狙いです。

-伝統文化親子教室、みんなの花展と、それぞれ目的意識がはっきりされているのですね! 

労力を払っているのだから、全ての活動を無駄にしたくはありません。
例えば支部研究会は支部役員が多くの労力をかけて、小原流本部も人件費や経費をかけて、研究院の先生方も時間と労力をかけてやっと開催できるイベントです。
研究会は専門教授者の皆様にとって、自身の生徒の進級の機会として、そして教授者自身が自分の技術を試す場であることを意識しています。生徒を研究会に送り出すということは、自分が勉強しなければいけないということですから。
私は生徒に、研究会では「研究院の先生と私が教えたことの違いがどう違うか、しっかり勉強してほしい」伝えています。自分を卑下しているわけではないのですが、私よりも偉い人に習えるんだよ、という価値づけをしています。小原流の源流を学ぶありがたい機会ですので、一回一回を大切にしたいです。
先日はまだ研究会に参加し得ていない初等科の方を研究会に呼び込むために、研究会の日に「勉強会」を設けて、なかなか触れない花材に挑戦いただきました。蓮を使った勉強会です。
水揚げポンプは本部から借りて、研究会に参加していない人にも広く呼びかけました。
難しい花材を触ることで、進級のモチベーションに繋げたり、研究会参加に結び付ける狙いです。

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蓮の勉強会の様子です。「子供だって難しいことに挑戦したがります」と川村先生。


研究会は支部役職者や研究院の先生が集まる貴重な機会です。この時間を支部を盛り上げるために有意義に使いたいと考えています。
このご時世に性別で区切るのは良くないとわかっていますが「男性のためのいけばな体験会」も研究会の際に開催いたしました。こちらも好評いただき、男性会員の獲得に繋がりました。

※「男性のためのいけばな体験会」については、「この人に聞く!vol.7 川村菜穂先生」の記事にて紹介いたします。



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この人に聞く!vol.7 小原流旭川支部 川村菜穂先生

小原流旭川支部で支部長として活躍されている川村先生。
行うイベントは全て支部を盛り上げる方向に繋げたい!というバイタリティーに溢れていらっしゃいます。
そんな先生にさまざまなアイデアや小原流の魅力について伺いました!


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