この人に聞く!vol.13 小原流京都支部 村上 主水 先生

村上 主水 先生


平成21年(2009年)小原流入門。

平成30年(2018年)東京から京都に引越し、主に海外の方たちに向けて専門教授者として活動を始める。

海外の方に向けて小原流いけばなを教えている先生、と言うことで名前が挙がったのが京都支部の村上主水先生です。村上先生は京都で主に外国人観光客向けにいけばなや茶道の体験サービスを提供されています。 今回は、海外の方向けに専門教授者としてどのような活動をしてきたのか、その方法やこれからどのような活動を視野に入れているのかを伺いました。

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いけばなを始めたきっかけ

-先生がいけばなを始めたきっかけを何だったのでしょうか?また、なぜ小原流に決めましたか?

仕事の都合で海外に住んでいた時、現地の方に人気のある日本人の茶道師範の方がいらっしゃいました。その方を見て、「日本人から日本文化を教えてもらいたい」というニーズがあることや、「日本人であることが武器になる」ことに気づきました。

帰国後、自分なら何ができるのかと、書道、茶道等いくつかの日本文化にチャレンジする中で、「いけばなの沼」にハマりました。時間を忘れて没頭できることに生まれて初めて出会った感覚でした。

小原流に決めたきっかけはホームページです。いくつかの流派のホームページを見比べた時、そこに掲載されていた写景自然や琳派調だったと思いますが、小原流の作品がとても魅力的に感じられました。そして南青山にあるビギナーズスクールの門を叩きました。

海外へ向けて

-最初から海外の方向けに教える予定だったのでしょうか?また、海外の方に教える機会はどのようにできたのですか?

いけばなを習うようになって、次第に「海外の方にも教えられるようになりたい」と思うようになり、東京でのサラリーマン生活をリタイヤしたタイミングで、外国人観光客が多く、レッスンのニーズも見込める京都への移住を決めました。

移住後間もなく、ある先生のご紹介から京都で韓国人の生徒さんにレッスンする機会に恵まれました。初めはお手伝いとして参加させていただき、その後、韓国で実施するレッスンを引き継ぎました。

韓国でのレッスンを始めて間もなく新型コロナウイルスが流行し、一時は中断を余儀なくされましたが、最近になってようやく渡航できるようになり、現地でのレッスンを再開しました。

-先生は直接韓国まで教えに行かれているとSNSで拝見しました。その際はどのようにレッスンしているのでしょうか?

韓国でのレッスンは基本2日間計8レッスンを集中して行っています。

2020年に改訂されたカリキュラムに基づいて、例えば初めてレッスンを受ける方は初回の8レッスンで入門を終了し、初等科の許状申請まで行います。海外の方にとっても許状は大変関心が高く、また、小原流は許状制度が明確に定められているため、海外の生徒さんも安心してお稽古を進められます。初等科の許状取得により、次回は初等科の8レッスンを2日間で実施します。その際、前回のレッスンから3ヶ月程度開きがあるため、(たてるかたち、かたむけるかたち)を復習してから次に入るという形で進めています。

生徒さんは花屋さんやアレンジメント経験者といった花を扱っている方が多く、飲み込みが早いので今のところは2日間で8レッスンを消化できています。しかしこの先、瓶花や様式のレッスンに進めば時間配分を変更する必要があるようにも思います。

-日本人の生徒さんと海外の生徒さんと教えるときの違いはありますか?

小原流はテキストがしっかりしていて花型のルールが決まっているので、日本人と海外の方に教えることは同じです。現在、テキストは日本語の他、英語、中国語の翻訳版がありますが、韓国語版はないため、韓国の生徒さんには日本語のテキストを購入してもらい、韓国語に翻訳した資料を合わせて使っています。私は韓国語ができないため、資料の翻訳は専門家に依頼し、レッスンは通訳を介して行っています。

-海外の方はお花をダイナミックに生ける傾向があるように感じるのですが、いかがですか?その点はどうお伝えしていますか?

確かにそういうところはあると思います。例えば、よく開花した桜を主材として使う時、枝を切ろうとすると「綺麗だから切らないで」と言われることがあります。体験レッスンであれば、生徒さんが「いけばなは楽しい」と感じて帰ってもらうことが大事だと思うので、あまりこちらのルールを押し付けないようにしています。お稽古を続けている方にはできるだけ理由を明確にして手直しするよう心掛けています。

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レッスンの様子

海外で活躍したい専門教授者に向けて

-日本人の生徒さんと海外の生徒さんと教えるときの違いはありますか?

①SNSの活用について

韓国の生徒さんに初めてレッスンをすることになった時、先方から「SNSに作品を投稿して欲しい。」と言われたことがきっかけでインスタグラムを始めました。今でもその生徒さんを含め、国内外のいけばなに興味がある人に見ていただけたらという思いで投稿を続けています。海外の方からすると、日本にいるということは日本の花材を使えるというアドバンテージもあるため、できるだけ季節の花材や基本取り合わせを意識した作品を紹介しています。

インスタグラムの他、フェイスブックや自身のホームページにもリンク連携させており、これらの媒体を活用することにより、これまでにギャラリーでの店内装花や市内ホテルのお客様向け体験レッスンのご依頼をいただいたり、京都旅行時に体験レッスンを受けたいと海外から直接ご依頼いただくこともありました。

SNSを始める前はまるで他人事として見ていましたが、今では具体的な仕事にも繋がる有効なツールとなっています。

②海外のお客さんのレッスンについて

海外の方向けのレッスンに関して注意点があるとすれば、まずは楽しんでいただくことが大切だと思います。ルールの説明はできるだけシンプルに最小限に留め、いかに楽しんでいただけるかを考えて対応するようにしています。

例えば体験レッスンで2名の方が受けられる場合、花材は異なる内容で3人分用意しています。

まずはお花を選ぶ楽しさを体験していただきます。

全て同じ花材を用意するよりも手間はかかりますが、最低でも2種類の選択肢を用意しています。お花を習いたいという海外の方は、経済的にゆとりのある層の方も多いため、用意する花材はあまり節約せず、色彩や種類を選ぶ楽しさにも気を付けています。

そして、残った1人分の花材でデモンストレーションを行います。私自身もそうですが、やはり先生のデモンストレーションを見られるのはとても嬉しいものです。テキストや解説書を見せて、さあやってみましょう!ではなく、最低でも見本花を作って飾っておくか、できれば生けているところをお見せした方が喜ばれます。剣山の挿し位置もデモンストレーションをしながら説明するとより分かりやすいと思います。

韓国でのレッスンにおいても、生徒さんが初めて挑戦する花型の場合は必ずデモンストレーションすることとしています。また、余った花材と空き時間を利用した、「まわるかたち」、「花奏」、「琳派調」など将来習う花型を紹介するデモンストレーションも大変喜ばれます。

③海外で日本文化を教えるということ

日本文化に興味を持つ外国人、そして外国人観光客はこれからも増えることが予想されます。

日本国内にいけばなの流派は数多ありますが 、中でも小原流いけばなは花型ルールや使用する花材がしっかり制定され、その中に生まれる様式美は小原流ならではの素晴らしさだと思います。小原流ファンの一人として(笑)、いけばな文化を海外に紹介するとともに、この様式美を世界中にシェアすることが大切だと考えています。

そこで海外の方にも正しく理解していただくため、できるだけface to faceで伝えることを心掛け、また、独りよがりの指導にならないよう、自分自身のお稽古や研修における正しい知識・技術の習得に留意し、日々自己研鑽に努めています。

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韓国でのレッスンの様子

村上主水先生はSNSでいけばなの作品をたくさんアップされている先生です。小原流で有名な先生の一人なので、どういう方なのか緊張気味のインタビュワーでしたが、気さくで優しくお話してくださり、小原流へ熱い思いも聞けました。海外に向けての活動など、これからも目が離せません!!村上先生、本当にありがとうございました。

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