全国支部紹介vol.18 小原流八戸支部
小原流は全国に144、そして国外には89の支部があります。皆さんが在籍している支部がそうであるように、それぞれの支部に設立のあゆみや特徴、現在の取り組みなどがございます。本ページでは、毎月、全国の支部を1支部ずつご紹介いたします!今回ご紹介するのは小原流八戸支部です。七代支部長 荒瀬豊波先生にお話を伺いました。
小原流八戸支部 支部長 荒瀬豊波先生
幼少期にいけばなを習っていたことがきっかけで、30代でお稽古に復帰。
1985年に准教授を取得。
2001年に一級家元教授を取得。2012年から八戸支部支部長を務める。
デーリー東北新聞社のホールに新聞で作成したレリーフ作品の制作や駅、近隣ホテルへの挿花活動だけではなく、地域住民向けの体験会など、多彩な活動を行っている。
八戸支部の特徴
令和5年5月にお家元が支部定例研究会の指導に八戸支部にお越しいただいた際に「地域に根差した活動を続けており、まとまりが良い。これからもいけばなを通して地域に貢献してほしい」とのお言葉を頂戴いたしました。
このお言葉のように、八戸市民の皆さまに向けて小原流ばかりではなく、いけばなの持つ魅力を発信し続けていくこと、そして研究会が和気あいあいとして幹部を中心に団結し、まとまっていることが八戸支部の特徴だと思っています。
例えば、生花を使ったしめ縄づくりなど市民向けの体験講習会を年に何度か開催して会員獲得に繋げているほか、八戸駅などJRの駅通路で続けているいけばな奉仕活動は今年で65年目を迎えています。
昨年も新幹線八戸駅開業20周年記念事業で、JR八戸駅に支部長が迎え花のいけこみを依頼され、式典に花を添えることができました。
JR東日本様からは何度も感謝状を頂戴しております。駅での挿花は本八戸駅でも長く続けております。
365日、支部役職者一同でお互いの作品を褒め合いながら、交代制で繋げています。
また、市内のホテルの玄関ホールに正月花を展示して新春の華やかさを演出したり、五月の節句ころにはホテルのロビーに花菖蒲を展示したり、いくつかのホテルでいけばな展示を続けています。
みんなの花展や県主催の「伝統文化出前教室」で子供たちにいけばなの魅力を伝えていたり、確かに活動は活発だと思います。
今回のインタビューも体験会を開催したばかりでしたので、本当は断りたかったくらい(笑)。一つ終ると次の行事と、楽しく、忙しくしているのが八戸支部の特徴でしょうか。
支部のまとまりを強める取り組みとして、研究会に向けた幹部会を頻繁に開いています。こちらは私が支部長になってから始めました。幹部会では研究花出題予定の花をいけて、表現に相応しい取り合わせかどうか、配材の色彩が美しいかなどを皆で研究しています。そこで幹部同士が切磋琢磨することで、チームとしてのまとまりが強まっています。
そうした支部役員の熱量が伝わってくださっているのか、研究会にはご高齢の会員も積極的に参加するようになりました。
「お花をいけることが本当の生きがいになっている」と喜んでいただいています。
大ホールを彩るレリーフ作品について
新聞にも取り上げられた大きなレリーフ作品の制作、支部役員で取り組んでいます。「みんなの花展」を盛り上げるための創作作品が中心となっています。
基本的には、支部長が構想を示し、幹部と一緒になって意見を出し合いながらアイデアを完成させます。
「みんなの花展」が終了した翌日には、既に次の創作作品のアイデアづくりに取り掛かっています(笑)。
「みんなの花展」は新聞社のホールで開催しています。 天井の高さが14メートルもあるホールにどのような作品がふさわしいのかを考えた時、緞帳のような新聞紙だけを使ったバラとボタンのお花のオブジェを考えました。
新聞社の希望で展示作品は花展終了後もそのままその場所に飾られており、来場する市民に喜ばれています。
10年を経て色があせてきたので、今年は明るさやにぎやかさのイメージを持つポピーをかたどった新たなオブジェに作り替えました。
制作は幹部を中心にパーツごとに手分けして作り上げたものを現場のホールに持ち寄って、皆で完成させていきます。何時間もかかる作業になったりしますが、皆さん楽しみながらやっています。
このホールのほかに新聞社のエントランス、社長室前の通路にも新聞紙を使った作品を飾らせていただきました。紙の新聞で制作した「お花」といいう意外性が訪れる皆様に好評のようです。
「えっ、これ新聞紙?すごいね!」「新聞社らしくて素敵」と驚きの笑顔に出会うと、支部役員一同幸せな気分になります。
そのほかの一般的なレリーフ、オブジェについても、皆で楽しくアイデアを出し合い、皆で手分けして作り上げるというイメージは一緒ですね。
小原流の枠を超えた活動の数々
新聞紙で作ったボタンの花とバラの花の緞帳の造形作品は、ホールを訪れた落語家やアーティスト、ジャズ奏者などからも好評をいただいています。
作品をご覧になられた日本舞踊の先生が、大変お気に召されて「今度の自分の発表会を最後としたい。集大成の舞台となるので、ぜひ同じボタンの花を飾ってほしい」というご依頼もいただきました。
同じように作品がきっかけとなって新聞社が開催している「読者クラブ(デーリー東北購読者向けのサービス)」の体験会の開催も依頼されました。 今では参加者を募集すると即日で定員に達するほど、地域の皆様に溶け込んだ催しになっています。
最近では「生花で作るフレーム~爽やかな夏の花たち~」という講習会を開催しました。講習会も支部役職者でアイデアを出し合います。
今回は持ち運びしても良いし、吊るしても良い、テーブルの左右から鑑賞できる花器を使いたい見という意見からフレーム型の花器を制作することにいたしました。
役員も仕事を持っているので忙しい中ではありますが、試行錯誤しながら進めてくださります。
定期的に参加している方からは、「楽しみ、ドキドキする!」という声が聞こえてきたり、八戸は都会ではないのに遠くから足を運んでくださる方もいて、それも励みになっています。
また八戸市文化協会に華道部があるのですが、10年間、私(荒瀬支部長)が華道部長を任されています。
いけばな各流派の連携を強める催しを企画し、5流派の「総合華道展」や寺院境内での「花供養祭」などにも一緒に取り組んでいます。
小原流が盛り上がることももちろん大切ですが、いけばなそのものが盛り上がっていけば良いなと考えています。
過去記事のご紹介!
支部で大切にしている子供たちへの指導
人口減少社会の現在、小原流だけではなくほとんどの伝統文化で会員の減少が続いています。
このような危機的状況は一朝一夕で解消することはありません。
長いスパンで考えれば、子供のころから伝統文化としての小原流の素晴らしさを伝え、伝統を守り続ける機運を高めなければなりません。 そのような想いから12年前から文化庁の補助をいただいて、年間10回の「伝統文化いけばな親子教室」を八戸支部で開催しています。
今年は5月から開催しましたが、子どもの参加者は23人で大変盛況でした。参加者には親の転勤で八戸に来た子どもたちの姿も目立ちました。この後またどこかの都市に転勤されても、多感な子どもの頃に触れあった小原流いけばななの楽しさを思い出していただければと思います。 一緒に来られる保護者の方々にも小原流の魅力が伝わるはずです。そのような着実な取り組みを続けることが大切だと思います。
子ども教室開催にあたっては、ただ参加者を待っているだけではなく、幹部を中心に学校や幼稚園、児童館、その他いろいろなところに出向き、参加を呼びかける活動も行っています。
しかしいきなり幹部が学校に飛び込むことは難しいので、学校の関係者とまずは知り合いになって、その後訪問するようにしています。冒頭にお話しした通り地域に根差した活動をしておりますので、そこで知り合った方に声をかけていく、そうすることで花の輪が広がっているということを実感しております。
2023年7月号の配信は21日(金)でした。18日(火)に急遽インタビューの依頼をしたにもかかわらず快くお引き受けいただけました。
一つ行事が終ったら次の行事、次の行事と忙しくされていながらも笑顔の絶えない荒瀬先生。
先生のバイタリティーに圧倒されたインタビューでした。荒瀬先生、つたないインタビューを笑顔で受けてくださりまして、誠にありがとうございました!